天然砥石について


天然砥石とは


砥石(といし)は、金属や木材、岩石などの表面を研磨する道具です。石器時代から、自然の岩石からつくられた天然砥石が研ぎの重要な道具として使われてきました。

19世紀の終わりころから、人造の砥石が開発され、天然砥石は希少になっています。

 

天然砥石は研磨粒子(けんまりゅうし:加工物を削り取る役目をする細かい粒子)の大きい方から、荒砥(あらと)、中砥(なかと)、仕上砥(しあげと)に分類されます。天然仕上砥は別名で合砥(あわせど)と呼ばれています。


天然砥石の産地


亀岡市の「丹波青砥(たんばあおと)」は約1億5千万年前の地層から産出される良質な中砥です。

また、京都市や亀岡市などから産出された約2億5千万年前の地層の合砥も、質・量ともに群を抜いたものです。

 

 

亀岡市は、現在でも数少ない天然砥石を産出している貴重な産地なのです。


日本の文化と天然砥石


天然砥石が最初に登場する記録は正倉院文書(しょうそういんもんじょ、奈良時代)です。このときすでに青砥という言葉が使われていました。

それから1200年以上に渡って、日本独特の伝統文化や伝統工芸に無くてはならぬ良く切れる刃物を、陰で支えてきた黒子(くろこ)が天然砥石だったのです。

例えば、京都をはじめ、日本各地にある美しい木造建築物。その木材を滑らか仕上げるために、天然砥石で鉋(かんな)を研ぐことが必要でした。

ユネスコ無形文化遺産に登録された和食。その素材の味を引き出すために、天然砥石で和包丁(わぼうちょう)を研ぐことが必要でした。 

妖艶に光り、芸術品の域にまで到達した日本刀。この神秘的な美しさは、今でも天然砥石が無くては研ぎ出すことができません。


天然砥石を未来に


人造砥石の登場により、現在では天然砥石はほとんど見られなくなりました。

しかし、天然砥石ならではの長続きする切れ味や仕上がりの美しさで、世界中のプロや愛好家を惹きつけてやみません。

 

「天然砥石館」では、貴重な天然砥石による研ぎ文化を後世につなぎ、国内外に発信するために活動しています。

「天然砥石館」では世界・日本各地の天然砥石をご覧いただけるほか、体験コーナーで実際に使ってみることもできます。天然砥石の魅力を是非身近に感じてみてください。



参考資料